私の生き方 in アメリカ

#15: 子どもと親、両方の気持ちに寄り添う幼児教育の場をつくりたい カー理恵さん(VA)

6/24/2023 | 私の生き方 in アメリカ インタビュー

今回ご紹介するのは、幼児教育に携わっていらっしゃる、カー理恵さんです。

1.アメリカに来た経緯を教えてください。

福岡県内にある幼稚園で教諭として勤めていた頃に、長崎佐世保にある海軍基地で勤務していたアメリカ人の夫と出逢ったことがきっかけです。結婚後は夫の任務地のハワイ州へ。その後、神奈川県横須賀市、カリフォルニア州など約3年ごとに引っ越しをしながら、2014年にここバージニア州にやってきました。

2.現在どんなお仕事をされていますか?

長年、幼児教育に携わってきました。引っ越しで新しい土地へ行くたびに、子ども達に関われる仕事を探し働き続けてきました。バージニア州に来てからは、日本の文化や習慣を取り入れながら日本のカリキュラムに沿ったプログラムを提供している日本語幼児教室で働いています。ひなまつり、十五夜、節分、お正月など四季折々の行事を題材にした工作や、童謡・手遊び・ひらがなの読み書きといった日本ならではの遊びと学びを通して子どもの成長をサポートするのが私の役目です。加えて、対面・オンラインのどちらでも楽しめるようなカリキュラム作りも心掛けています。ご両親が日本人(駐在)の方はもちろん、ご両親のいずれかが日本人、ご両親が日本人でなくとも以前日本に住んだ経験から日本との接点を持ち続けたいと考えているご家庭のお子さんなど、様々なバックグラウンドの子供たちが集まっています。日米の文化的な違いや特長が子ども達の様子からも見て取れ、非常に面白いです。

3.幼児教育の道に進まれたきっかけは?

思い返せば小学生くらいから、親戚や近所の自分よりも小さい子の面倒を見るのが好きでした。子ども達といると本当に純粋に、楽しいなぁ可愛いなぁって思うんですよね。子どもに触れ合えることを一番の目的にして短大で学び教諭となり、実際に幼稚園で働き始めたわけですが、私はそこで初めて、保護者側が抱える苦悩というものを目の当たりにしました。もちろん、子育ては楽しいことも嬉しいことも沢山あるけれど大変なことも多い。どのお母さんも、我が子のことを色々考えながら毎日すごく頑張っているわけですが、悩みは尽きないようでした。当時は未だ結婚もしておらず子どもも生まれていなかったので、保護者の現状を知れたことは新鮮でした。相談を受けたり話を聞いたりして向き合っていくうちに、子どもに対してだけでなくて、親の気持ちにも耳を傾けることの必要性を感じるようになりました。親の気持ちがほぐれると、それは子どもにもポジティブな影響を与えます。親と子の両方に寄り添うことこそが幼児教育だと実感した当時の経験が、今に繋がる原点です。

4.教諭の立場から親子を見ていてどう感じますか?

大人と同じように、子どもにも「相性」がありますよね。子どもの人間関係が保護者同士の付き合いに少なからずリンクしていることも確かです。元気な子、活発な子、大人しい子、子どもにだってみんなそれぞれ性格があり好みがあるわけですから、大人を見るのと同じような視点でもって子どもをよく観察し、フィーリングを探ったりきっかけを作ったりしてあげることが、私たちの役目だと感じています。お友達みんな誰とでも仲良く楽しく過ごせることが一番だと思われがちですが、どうしても上手くいかないこと、仕方が無いことだってあるよねと親の方が割り切れると、子どもたちはもっと生きやすくなる気がするんです。誰と一緒だと居心地が良いのかを子どもにも、そして大人である自分自身にも聞いてあげるのがおすすめです。

5.日米で幼児教育に携わるなかで大変なことや楽しいことを教えてください。

日本で生まれ育った子どもたちはやはり集団生活に慣れていて、こうしよう・ああしようと言うことに対して割と素直ですし、協力し合うことが一般的なので一日のカリキュラムがスムーズに進みます。アメリカで育った子どもたちは個性を重視されてきているので、手を上げたり自ら発言したりすることに積極的。遠慮しがちな日本の子どもの様子も愛おしいものですが、こちらの子はやはりはっきりと意思表示をします。個性は絵心や色使いにも表れ、作品が一人ひとり本当に全く違う仕上がりになるので飾るととても映えるんですよ。こういった両方のタイプが共存している点が、アメリカにある日本幼児教室ならではの特長です。みんなをひとつにまとめ上げていく過程は大変ですが、最大の楽しみでもあるんです。違いを楽しみながら子ども達と接しています。
また子どもはとても柔軟です。周りの環境に如何様にも染まります。その上で、どんな子どもも子どもなりの努力を重ねているわけです。現地のプリスクールに通い英語で生活している子は本当は英語のほうが話しやすいはずですが、日本語幼児教室で活動する間は日本語で話そうと頑張るんですね。そんな様子を見る度に素晴らしいなと思いますし、私の方が元気をもらいます。制服もないこの地では、着てくる服も靴もバックパックもみんな違う。持ち物ひとつ取ってみても、個性や意思を表現する場となっていて多様性で溢れています。

6.アメリカで生活して苦労したことは?

日本を離れ異国で暮らすというのは、みなさん少なからず寂しい気持ちがあると思います。すぐに頼ることのできる身内もいないなか、私自身、異国での子育ては苦労が絶えませんでした。でもだからこそ日本人の仲間同士で助け合うことの有難みが分かりますし、相手の気持ちを考えて行動するスキルが高まっていくと思います。日本にいる時とは全く異なる環境が、自分を強くしてくれました。

7.今後の目標はありますか?

これからも幼児教育に情熱を注いでいきたいです。冒頭でもお話した、子どもと保護者の両方の視点に立って活動することを大切にしながら、特に日本を離れ異国で子育てを頑張っているお母さんお父さんたちに寄り添えるコミュニケーションの場を作りたいという思いがあります。私自身のアメリカでの子育て経験、そして、日米両方で取り組んできた教諭としての経験が誰かのヒントになるなら、こんなに嬉しいことはありません。

8.アメリカにいてやりたいことが見つからなくてもやもやしている日本人女性へのメッセージをお願いします。

ぜひ、一歩前へ踏み出してみてください。お子さんがいらっしゃる方は、クラスメイトのバースデーパーティーにちょっと勇気を出していってみる。アメリカには子どもを預けられるジムもあるのでそういった場所で気分転換をしながら出会いを広げることもできます。今はWEBやSNSで趣味のコミュニティをすぐに見つけられるのもいいですよね。ご主人の仕事関係のイベントですとかパーティも絶好の機会です。日常生活のなかで、そういった社交の場に足を運んでみることをおすすめします。ちょっと億劫だなと思っても、行けばきっと何かがある。異国での生活を彩ってくれる新しい発見は、あなたの隣、すぐそこにあります。

★Interviewerのあとがき

日米の行く先々で、幼児教育に携われる場を探し活動の幅を広げてこられた理恵さんのお話からは、情熱はもちろんのことしなやかさも感じられました。勇気をもって出向いてみれば思いがけない発見に出会えるというメッセージは、異国で暮らす私たちの背中を大きく押してくれます。その例えを「スーパーだってファーマーズマーケットだって行けば必ずそこで何か新しい物を見つけられる感覚と同じ」と仰ったこともとても印象に残りました。子どもと親の両方に寄り添うというモットーでこれからも活動を続けられる理恵さんの、次なるステージに期待が高まります。ありがとうございました。

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