私の生き方 in アメリカ

#13: 美味しい食事を通して、たくさんの人と繋がっていきたいー谷脇多佳子さん(DC)

4/4/2023 | 私の生き方 in アメリカ インタビュー

今回はHarmonious Kitchen創設者、代表の谷脇多佳子さん(ワシントンDC在住)をご紹介いたします。

1. 現在のお仕事につく経緯を教えてください。

今の仕事をする前は、アメリカで環境問題や食の安全に特化した通訳・翻訳業などをしていました。私は常に、本当にやりたいことは何か自分に問いかけていたのですが、ある時、いわゆる日本の食べ物として有名なお寿司やラーメンではなく、それ以外の食事を提供したいと考え始め、今までの知識と経験をもとに、安全で美味しい食事を提供するお惣菜屋さんを始めようと決断しました。

2. 現在のお仕事について教えてください。

2017年5月にHarmonious Kitchenの事業登録をし、実際に活動を始めたのは2019年です。和食のお弁当やお惣菜の販売、ケータリング、ファーマーズマーケットでの出店を中心に事業を行っています。

Harmonious Kitchenのコンセプトは「和で輪をはぐくむ・からだが喜ぶほっこりごはん」です。このコンセプトの下、私たちの提供する食事には3つの思いが込められています。まずは「Harmonious Tastes」、バランスの取れた食事です。塩味、甘味、酸味、苦味、旨味の5つの味のバランスを上手に取ることで、添加物や化学調味料を使用せずに安心して食べて頂けるようにしています。最近では、甘い、塩辛い、脂っこい食べ物が売れると認知されていますが、こういった物を食べ続けると生活習慣病になってしまいます。Harmonious Kitchenの提供する食を通して、病気の予防にも役立ちたいと思っています。お客様の中には、大腸癌の検査で頻繁に再検査になっていた方が、私たちの食事を取り入れてくださってからは再検査がなくなったとおっしゃる方もいます。

二つ目は「Harmonious community」、人の輪です。美味しい食事を通して人の輪を広げていくこと。美味しい食は世代を超えて人をつないでくれます。今キッチンを手伝ってくれているチームに高齢者の方から高校生まで幅広い年代がいることも、その一端です。三つ目は、自然環境との調和です。食材を無駄にしないこと、コンポスト可能な器を使うことを通して、環境にやさしい食の提供を目指しています。また、Table for Two等の団体とのコラボレーションを通し、食育にも力を入れています。

3. お仕事のどんな点が楽しいですか?

人との繋がりです。様々なお客様から、木曜日の配達後に「とても美味しかった」「1週間のハイライトはHarmonious Kitchenのお弁当です」などとメールをいただくのが嬉しいです。時にはお客さまが縁をつないでくださることもあります。同じファーマーズマーケットに出店している農家の方をご紹介いただき、今後はその農家の大根やかぶなどを使ってみたいと思っています。また、人に恵まれていることにも感謝しています。キッチンの仕事は大変ですが、チームの皆と作ることで達成感を感じられます。お弁当の内容もどんどん進化し、成長を感じるのはとても嬉しいですね。今では1日100個のお弁当を作ることができています。

4. 現在のお仕事で苦労したことを教えてください。

業務用キッチンや食品業界の経験がゼロからのスタートだったので、立ち上げるまでの手続きが大変でした。次に大変だったのは、資金繰りです。事業のスタート後も落ち込むことも多かったのですが、友達が作ってくれたサポートグループに支えられて今があると思っています。また、クラウドファンディングを活用してビジネスライセンスの費用を集めることもできました。お弁当を買ってくださっている方々や、日本の家族、友人にも支援してもらいました。
パンデミックは私の事業にも影響を及ぼしました。Harmonious Kitchenは、ワシントンDCにある日本企業のオフィスでお弁当を販売することからスタートしましたが、パンデミックとなり販売を一時停止することになりました。しかし幸いなことに、それまでにお弁当を買ってくださった方々が自宅に届けてくれないかとリクエストしてくださり、現在は隔週ですが、 当初は毎週木曜日にお弁当のデリバリーサービスを開始しました。現在もワシントンDCメトロ圏内にお弁当を届けています。私たちのお弁当は胃にもたれない、体がきれいになった気がするとのご感想を聞き、嬉しく思っています。

 

Harmonious Kitchen

5. 自分が成長したと感じる経験談を教えてください。

この仕事を通して、今までお話をしなかった人と年代を超えて関われることが自分の成長だと思います。また、ずっと興味のあった環境問題にもこの仕事を通して取り組むことができています。振り返ると、今までの経験全てが役に立ち、この仕事が私の集大成だと感じています。

6. 今後の目標を教えてください。

Harmonious Kitchenの事業設立から6年となり、少しでも利益を出したいと考えています。目標の一つは、小さくても良いので、ショーケースに新鮮なお惣菜などを並べて売れる場所を確保することです。店舗販売することで、Harmonious Kitchenのギフトカードを気軽に使っていただくことができるようになると考えています。出産祝いや病後の方への贈り物としてギフトカードを購入していただけるようなシステム作りを目指しています。また、味噌汁をメインにしたオンラインでの料理教室もやってみたいです。

今は使い捨てのコンポス可能な容器を使っているのですが、最近購入した松花堂弁当用の容器は、再利用可能で見た目も素敵なんです。ケータリングにも最適なので、これからはケータリングの仕事もどんどん増やしていきたいと思っています。また、自分が年を取ったり、ご飯を作れなくなった際に、Harmonious Kitchenを通して自分が好きなものを食べられるシステム、コミュニティーを作っておきたいです これからも後ろを振り返らず、あんなことをしたい、こんなことをしたいと、落ち込む時もありながら、前へ進んでいきたいですね。

7. アメリカにいて、やりたいことが見つからずに、もやもやしている日本人女性へのメッセージをお願いします。

今の自分にモヤモヤしていても、気にすることはないと思います。自分の好きなこと、得意なこと、やっていて苦にならないことにフォーカスしていくと、今は見えなくても、追求していくことで見えてくると思います。自分のやりたいことを、考え続けることをやめないでほしいです。

Harmonious Kitchen ホームページ: https://harmonious.kitchen/
Facebook: @harminiouskitchen
Instagram @harmoniouskitchendc

★Interviewerのあとがき

「今が人生の中で一番幸せ」と言い切れる多佳子さんには、体にも環境にも優しい、美味しい食を提供するという、強く揺るがない思いを感じました。インタビュー後、お弁当を注文させていただいたのですが、アメリカでこんなに健康的で美味しいお弁当が食べられるのだと感激しました。子供も夫も美味しい!と絶賛していました。忙しい日々に追われがちなのですが、コンセプトにある通り、ほっこりとする食事に癒されました。今度はファーマーズマーケットへも足を運んでみたいと思います。今後のご活躍、楽しみにしております。

★パートタイムスタッフ募集中

Harmonious Kitchenではパートタイムでキッチンで働きたい方を募集中だそうです。多佳子さんがHarmonious Kitchenでのお仕事の魅力をお話してくださいました。
「健康寿命を伸ばす秘訣は、バランスの取れた食事、適度な運動、そして社会への貢献と考えているのですが、お弁当作りは3つの秘訣が揃っている仕事です。現在キッチンの仕事を手伝ってくれているメンバーは、子育て中のお母さん、高齢者、芸術家、絵本作家、通訳、翻訳家、高校生などで、皆で和やかに働いています。キッチンの仕事は大変な作業だけれど、皆、指示を待たずに自主的に仕事をし、楽しかったと言って帰ってくれています。達成感を感じられる職場なのではないかと思います。」
興味がある方は、ぜひ多佳子さんへ連絡してみてください。
<連絡先>
谷脇多佳子
Harmonious Kitchen, LLC ; harmoniouskitchendc@gmail.com

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