My Life in America

#36. 心から楽しめるボランティアは人生を豊かにしてくれる大切な存在 – 井上由紀 (HI)

1/9/2026 | My Life in America

今回は、ハワイ州(HI)で国際教育関係の団体で勤務を続ける傍ら、様々なボランティア活動をしていらっしゃる井上由紀さんにお話を伺いました。

1. Please tell us about your journey coming to the United States.

日本では国家公務員として大学で働いていました。1997年にはフルブライト奨学生として、国家公務員のまま渡米し、コロンビア大学で学びました。立場としては聴講生に近く、授業の単位は多少取れましたが、学位までは取得できませんでした。その間、インターンシップに参加したり国際会議に出席したりと、多くの貴重な経験を積むことができました。

帰国後は職場に戻りましたが、国際教育という分野に興味がわき、アメリカでまだやり残したことがあると感じるようになりました。その気持ちが強くなり、思い切って退職して再びコロンビア大学に留学し、国際教育の修士号を取りました。その後はアメリカで教育関連の仕事をいくつか経験し、今は国際教育に関わる団体で20年ほど働いています。

2.今、情熱をもって取り組んでいること、好きでやっていることは何ですか?

現在は、ハワイ動物愛護協会での動物・保護猫の世話をはじめ、ガーデニング、教会での奉仕活動、文化施設における日本語での案内・説明、メディアやYouTube番組でのライティングや字幕サポートなど、多方面でボランティア活動を行っています。

自分の興味や好奇心に従って活動を選び、面白そうだと感じたことには積極的に参加しています。趣味のように心から楽しみながら取り組めるため、ボランティアは私にとって単なる活動ではなく、人生を豊かにしてくれる大切な存在です。

3.その活動をすることにしたきっかけは何ですか?

これまで主にニューヨーク(NY)で生活してきましたが、仕事の都合でいくつかの街へ移り住むこともありました。長いあいだ「自分の居場所はNYだ」と思ってきたものの、いつのまにか「もうNYではないのかもしれない」と感じるようになりました。そんな中、次第にハワイに心惹かれるようになり、本気で移住を考えるようになっていました。幸運なことにリモートワークが認められたことで、今も仕事を続けながら、この場所で自分らしく生きる道を選ぶことができています。

国際教育の分野でトップクラスの団体で働くという大きな夢は叶いました。けれど、気がつけば、かつての熱い気持ちは少しずつ色あせてしまっていました。

そんな時にもう一度向き合ったのが、私にとって原点であるボランティアでした。私は学生の頃から、ずっとボランティア活動に親しんできました。ボランティアを通して、好きなことを大切にしながら毎日を過ごしています。

4.仕事や活動の楽しいところ、大変なところは?

現在は非営利団体で働いています。ここでは、人を蹴落として出世を目指すような人はおらず、みんな穏やかで優しい雰囲気です。競争もそれほど激しくありません。一方で、何十以上もの国の言語が飛び交う多文化的な環境で、さまざまな国の人々がそれぞれ異なる方法で働く様子を見るのは、とても楽しいです。

リモートワークでは、不便さやコミュニケーションの難しさを感じることがあります。パソコンの不具合を説明したり、同僚に修正を依頼したりする際、スクリーンショットに印を付けるなど工夫しても、言葉だけでは細かいニュアンスが伝わりにくく、誤解が生じて修正に時間がかかることがあります。対面であればすぐに済むやり取りも、オンラインでは思った以上に手間と労力がかかってしまいます。

ボランティア活動は自分のやりたいことなので、とても楽しいです。でも同時に、責任感を持ってしっかり取り組むようにしています。ただ、皆が私と同じような責任感を持っているわけではないので、その違いを感じることがあります。

5. アメリカ生活で、苦労したこと、日本に帰りたくなった体験があれば、教えてください。

学生時代が一番大変でした。英語がわからなかったので、授業についていくのにとても苦労しました。それでも仕事を辞めてアメリカに来たからには、帰るという選択肢はありませんでした。卒業を目標に、どうすれば少しでも楽に進められるかを考えながら授業を選びました。レポートを書く時も、本をすべて読む時間がない分、要点だけをつかんでまとめるなど、自分なりに工夫を重ねました。やるしかないという気持ちで頑張っていました。

6.アメリカにきて、自分が成長したとおもえるような体験談はありますか? 

競争の激しいNYで働き、アメリカ企業ならではの働き方を学べたことは、本当に大きな財産です。女性一人でNYに暮らした経験は、仕事面だけでなく、人としても大きく成長できた貴重な時間でした。

職場では男女差をほとんど感じることはなく、昇進の機会も平等に与えられていました。上司に提出する資料にはハイライトや付箋を加え、書類をわかりやすく並べて渡すなど、日本人らしい細やかな気配りや誠実さを大切にしてきたことで、上司から信頼され、重要な仕事を任されるようになりました。NYではチームマネージャーとしての役割も経験しましたが、一方で、得意ではない仕事を任されることもありました。

今はボランティアを通してさまざまな人と出会い、新しい経験を積み重ねることが、自分の成長につながっていると実感しています。

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7. 今後の夢や目標は?今後の活動をどうやって進めていきたいですか?

今はガーデニングボランティアに参加し、学びながら野菜や果物を育て、自然と共に暮らすことを大切にしています。自給自足のような生活に憧れ、健康やオーガニックな食生活にも意識を向けています。

農業を始めてみると思っていた以上に難しく、農薬を使わない分、虫や雑草の問題にも悩まされますが、自然の流れに任せ、ゆっくり楽しみながら続けています。田舎で育ったので、子どもの頃から庭で採れたものを食べるのが当たり前で、その頃の幸せな記憶が今の農業への思いにつながっているのだと思います。

また、動物の世話や保護猫のサポートを通して、動物と触れ合う時間は癒しになり、守ってあげたいという気持ちが一層強まります。仕事をしながらも、自分のやりたいことや心が喜ぶことを大切にして生活しています。

8.アメリカでこれから何かを始めようと思っている日本人の方にメッセージをお願いします.

何かをやってみたいと思ったら、まずは少しでも動き出すことが大切だと思います。あれこれ考えているだけでは状況は何ひとつ変わりません。実際に動いてみて、はじめて見える景色があります。

止まった車を動かすのは大変だけれど、走り出した車なら方向を変えるのはずっと簡単です。人生も同じで、立ち止まって悩むより、動きながら進む道を調整したほうが、前へ進みやすいのだと思います。

何か違うなと感じたら、そのときに軌道を少し変えればいい。完璧な答えを用意してから動く必要はありません。まずは勇気を出して一歩を踏み出すこと。それが小さくても、その一歩が新しい可能性をひらくきっかけになります。

★ Interviewer's note

井上さんが「純粋に楽しいからボランティアをしています。」とおっしゃったことが、とても印象に残りました。なぜそこまで楽しめるのか、考えさせられました。

夢や目標に向かって努力していると、つい将来のことばかり気になってしまいがちです。大きな目標を達成したあとや、長く努力を続けるなかで疲れを感じることもあるでしょう。しかし、ゴールだけを追うのではなく、今この瞬間に目を向けることで、一日一日をより大切に生きられるのだと感じました。

井上さんが言われるように、私たちの才能や興味は、これまでの体験や「なんだか面白そう」と心が動いた小さなときめきの中に隠れているのかもしれません。価値観は変わっていくものだからこそ、今の自分が惹かれるものにそっと目を向けることが大切だと思います。「自分が役に立てるかもしれない」「まずは試してみよう」そんな軽い気持ちで始めるだけでも、視野が広がり、情熱が育ち、日々の暮らしがより豊かなものになっていくのだと思いました。

井上さんの行動力があれば、これから待っている出会いや経験も、きっと素晴らしいものになるはずです。今後のご活躍を心より応援しています。

 

取材・執筆:ビュフター一枝

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