今回は、ニューヨーク州で、コンサルティング・マーケティング会社Blank Slateを経営し、またマサチューセッツ登録NPO Binnovative(ビノベイティブ )の創設者でCEOでもある西本会里子さんにお話を伺いました。
1. Please tell us how you came to the U.S.
大学卒業後、大企業の情報システム部で働いていた時、アメリカの子会社と毎日メールや電話でやりとりをしていました。子会社の社員が日本に出張に来た時や、私がアメリカに行った際に、アメリカで働きたい思いを先方に伝えていたところ、ポジションが空いた時声がかかりました。就労ビザ(H1Bビザ)が取得できたので、渡米しました。
2.現在のお仕事、あるいは今、情熱をもって取り組んでいることは何ですか?
今は子育てを優先しながら、テクノロジープロダクトのマーケティングやコンサルテーションを行う会社を経営しつつ、Binnovativeでは、活動の一環として、New England Computing Innovation Academy*を運営し、チームを率いています。子供達にIoTのワークショップやハッカソン**などを行ったりしてテクノロジーとイノベーションを学んでもらいます。 IoTとは「モノ」をインターネットにつなげる技術で、電子工作やプログラミングを通して体験してもらいます。ワークショップの後は、より高度なトピックの自習やアプリケーション開発イベントへの参加の機会を提供しています。子供たちの表現力や創造力を引き出す素晴らしい方法です。
また、2014年以降、NASA主催の世界最大のハッカソン、NASA International Space Apps Challenge (ISAC)*** のボストン大会****のオーガナイズを行っています。
*NECIA, https://www.binnovative.org/necia/
**ハッカソンとは、IT技術者がチームを組み、与えられたテーマに対して、定められた期間に集中的にソフトウェアやサービスを開発し、アイデアの斬新さや技術の優秀さなどを競い合うイベント。
*** ISAC, https://www.spaceappschallenge.org/
**** ボストン大会, https://www.binnovative.org/isac2024/
3.その仕事・活動に携わることになったきっかけは?
テクノロジー会社、IT企業や大企業でシステムの導入や運用を行っていた時、エンジニアとビジネスユーザーの間に立ち、お互いの立場を理解しつつ仕事をしていました。しかしながら、システム導入が必ずしもユーザーを幸せにしている訳でないと釈然としない気持ちを常々持っていました。テクノロジーは人間を助けるためのものだったはずなのに人がテクノロジーに使われているような状況ではないか、これはどうにかならないか、と感じていました。
2012年に会社を退職し、起業家精神をもったリーダーを育成することでで名高いボストンのバブソン大学でMBAを取得することにしました。MBAのカリキュラムでユーザー目線を重視するデザイン思考を学んだ時に、これはまさに私が先に述べたような問題を解決すると感じました。
また、在籍中クラスメートの発想の豊かさや行動力に感動して、それが日本人にも自然にできるようになればきっと日本人の起業家精神の醸成のきっかけになるのではないかと思うようになりました。バブソン大学で気づいたことですが、起業家精神の定義は、必ずしも起業することではなく、自分がやることを自分で決めて、オーナーシップを持ってやり遂げることだと私は理解しています。チームメートと異文化の中で共創する過程で、お互いに無いものを学び取ることを通じてこの起業家精神を育てることにつなげられるのでは、という思いが沸き上がりました。そこでBinnovativeを在学中の2014年に創立、活動を開始しました。そのあとグリーンカードも取得できたので、自分の会社を立ち上げました。
4.その活動の楽しい点、大変な点を教えてください.
Binnovativeが拠点を置くボストンでは、ユニークで、多様なバックグラウンドを持つ人々に出会えます。一方帰国などでスタッフの入れ替わりが激しいため、組織を継続するのは容易ではありません。継続できているのは、スタッフ、メンター、またスポンサー企業などの協力のおかげで、感謝しかありません。
また、自分の会社を持つということは、フレキシブルに働ける反面、企業で働くことで得られる安定を失います。
5.アメリカにきて、自分が成長したと思える・ 体験談はありますか?
NYで勤務していた時、システム導入の仕事は出張が多く、拘束時間も長かったので、仕事は充実して楽しかったけれど自分のプライベートを考える時間がありませんでした。いっそのこと日本に帰って婚活しようかなと思ったことさえありました。けれど、常にオープンマインドで前向きでいることで克服できてきている気がします。それから、寝ると辛い気持ちは忘れて翌日はスッキリ起きられる性格も幸いしているのかもしれません。
また、いろいろなことに挑戦してみたかったので、大学院にも通いましたが、働きながらの受験勉強は苦労の連続で、大学院での勉強も大変でした。
6.やっている活動に関わらず、アメリカにきて、自分が成長したとおもえるようなきっかけ・体験談はありますか?
MBAを取得できたことは、充実感を得ただけでなく、大きな自信になりました。また子供がアメリカの異文化の中でできちんと育つために考えなければならないことはたくさんあります。自分だけでなく、家族の将来について、将来設計を客観視できたことで成長していると感じます。
7.今後の活動をどうやって進めていきたいですか?
Binnovativeでは、NECIAの活動やハッカソンの活動などを軸にオンラインで活動していますが、今後は組織として体制面を整えたいです。
コンサルティング会社は、子供たちの成長にあわせて、少しずつ拡大していけたらと思っています。幅を広げ、質を高めて、デザイン思考のテーマを持ちながら、様々な所に貢献できるようにしたいです。
8.アメリカに来て、仕事探しや何か活動を始めようと思っている方へメッセージをお願いします。
色々な所に機会が転がっていると思います。自分のやりたい事でないかもしれないけれど、何かピンときたら行動してみると、興味のあることに繋がっていくこともあると思います。NYで社外のネットワークを開拓しようと思い、高校でバトミントンをしていたので、再開しようとサークルに通い始めました。すると、友達もたくさんでき、色々と変化していきました。その活動を通じて、今の夫と知り合うこともできました。
仕事でもプライベートでもセカンドコンタクトがキーになると言われているので気軽に行動してみるといいと思います。
Binnovative : https://www.binnovative.org/
ボランティアスタッフ募集!
Binnovativeでは、テクノロジー関連だけでなく、企画、広報、会計などのボランティアも募集しています。興味のある方は、hello@binnovative.org までご連絡ください。
★ Interviewer's note
Binnovativeで開催しているイベントは短期的なチャレンジイベントですが、異文化交流をしながら、新たな発想を生み出す環境を提供しくれます。西本さんのおっしゃるように、積極的に問題提起し、挑戦する人が増えれば、企業で新規事業を開発したり、社会問題を解決したりする人が増えるのではなかと期待がもてます。 日本でもスタートアップの育成・創出が推進されるなか、Binnovativeの活動や考え方を多くの人に体験してもらい、広めてほしいと思いました。これからのさらなるご活躍を期待しています。
取材・執筆:ビュフター 一枝