My Life in America

#34. 人生は、自分の「好き」を軸にすれば満たされる- 舟橋潤 (HI)

8/9/2025 | My Life in America

今回は、ニューヨーク州(NY)でメイクアップアーティストとして活躍し、現在ハワイ州(HI)の大学で陶芸を教えている舟橋潤さんにお話を伺いました。

1. Please tell us about your journey coming to the United States.

クリエイティブな世界で働きたくて、高校で美容免許を取得し、1996年にNYへ渡りました。知り合いも仕事もない中、本屋でファッション誌を読み漁り、一番好きだったメイクアップアーティスト、パット・マックグラス(Pat McGrath)に手紙を送りました。しばらくして彼女のエージェントから連絡があり、英語が話せない不安の中で面談し、そこで「仕事は相性」と言われ、アシスタントとして採用されました。メイク道具運びや整理から始まり、衛生管理の丁寧さが評価され、次第にメイクを任されるようになりました。

2. 現在のお仕事、あるいは今、情熱をもって取り組んでいることは何ですか? 

ハワイで「CLAYLABO」を運営し、これまで誰も成功しなかった100%ハワイ産の土と釉薬による陶磁器の開発に取り組んでいます。釉薬の実験で新しい色を見つけるのが何よりの楽しみです。また、シャミナード大学とハワイ大学で陶芸を教えており、造形に情熱を注いでいます。粘土に触れると、まるで全身の細胞が「これが好きだ」と声を上げているような、体から悦びが湧き上がってくるのを感じます。

3. 陶芸に携わることになったきっかけを教えてください。

ファッションショーの撮影をきっかけにファッションデザイナーと出会い、一緒にものづくりをすることになりました。もともと造形が好きだったこともあり、ショーのためにブレスレットなどの彫金ジュエリーを制作しました。それがきっかけで、立体で何かを作ることが本当に好きなんだと気づきました。ある時、彫金で作品を作っていたところ、友人から「粘土の方が表現しやすいかもしれないよ」とアドバイスをもらい、試してみたらすっかり夢中になってしまいました。それから、ジュエリーのアイデア提案や制作も積極的に行うようになり、次第に手がける作品のスケールも大きくなっていき、やがて素材はセラミック(陶磁器)へと移行しました。

撮影のない日は、近所のセラミックスタジオで多くの時間を過ごし、12年間メイクと造形の二つの仕事を両立してきました。メイクの仕事では、撮影現場が好きで、世界中を飛び回る日々を過ごしていましたが、50代後半から70代まで続けるのは難しいと、40代後半になって感じ始めました。その頃から、造形により重きを置くようになりました。

メイベリンのキャンペーンを任され業界のトップに立つ機会も得て、次のステップは自身のメイクアップラインのプロデュースという段階までたどり着きました。ただ、それが本当に自分のやりたいことなのか疑問を持つようになり、メイクの世界では、自分なりにやりきった、という手応えもあったので、これからは心から好きなものに向き合おうと決め、セラミックに専念することにしました。家族には反対されましたが、自分の人生ですから、自分はこうしたいという思いを大切にしました。

琴奏者グループ

4.陶芸の楽しいところ、大変なところは?

釉薬の組み合わせで生まれる色には、毎回ワクワクします。窯を開けた瞬間、想像以上の色が現れたときが一番楽しく、メイクで色を重ねて、写真に仕上がったときに感じた色の感動と重なります。思い通りの色が出ると、本当に嬉しくなります。

大学で教える中で一番難しいのは、やる気を見せない学生にどうやってモチベーションを持たせるかということです。目標が見えなかったり、自分から行動できない学生に対しても、できる限り同じ目線に立ち、一人ひとりの個性や可能性を丁寧に見るようにしています。

例えば、物事にあまり関心を示さない生徒には、まずはその子の好きなことや得意なことを見つけることから始めます。ゲームやアニメなど、その子が興味を持てるものをうまく課題に取り入れながら、好奇心を大切にして、少しずつ前向きに取り組めるよう工夫しています。自分のアイデアが求められる環境を作ると、自然と自発的に動く力が養われます。

また、欠席が続いている学生には、「心配してたよ」と親身に声をかけます。自分のことを気にかけてくれていると実感することで、学生は心を開いて、安心して自分を出せるようになり、信頼関係を築くことができます。消極的だった学生が卒業する時には、社会活動のリーダーになっていたり、行動的になった例を見てきました。単に技術や知識を教えているだけでなく、学生が内面から成長できるような関わり方を心がけています。

5. アメリカ生活で苦労したこと、日本に帰りたくなった体験などを教えてください。

パットのアシスタントとして2年間毎日働いていましたが、ほとんど給料がもらえず、とうとう手元に残ったお金はたったの$200になってしまいました。来月の家賃すら払えない状況で、「このままではまずい」と強く感じ、自分で道を切り開くしかない、独立するしかないと思い決心しました。すでに、パットのアシスタントとして名が知れ渡り、American VogueやHarper’s BAZAARの仕事もしていたので、ポートフォリオを持ってエージェントを探さなくても、仕事を得ることができました。

貯金が底をついても、日本に帰りたいと思ったことは一度もありませんでした。日本は働きにくい国だと思うし、ずっとセラミックをやっているわけでもないのに、大学の教授になれたのは、アメリカだからです。アメリカにはチャンスがどこにでも転がっていると思います。

6.アメリカにきて、自分が成長したとおもえるようなきっかけ・体験談ありますか?

NYで過ごしていた日々は、毎日が自分を成長させてくれるきっかけの連続だったと感じています。例えば、街を行き交う人々のファッションセンスの良さには、いつも刺激を受けましたし、パフォーマンスアーティストのエネルギーや自由な表現にも影響を受けました。

また、日本とは異なる価値観にも多くのことを学びました。日本では自分がどう見られるかを意識し、周囲との調和や協調性を大切にする文化がありますが、NYでは上昇志向がとても強く、皆が自分の目標に向かって突き進んでいる印象でした。たとえ失敗しても、すぐに気持ちを切り替え進んでいく。その姿勢に、大きな刺激を受けました。

 

ハワイのニュースチャンネルに出演。お仕事やボランティア活動について話をした。

7.今後の夢や目標は?今後の活動をどうやって進めていきたいですか?

ハワイの土を使った研究を深めていくことが、今の一番の目標です。将来的には大学での地位を高め、社会活動にも積極的に関わっていきたいと考えています。

現在は、ハワイのアーティストの集まり「fishcake」で展示やワークショップの企画に携わり、アップサイクルによって不用品をファッションアイテムとして生まれ変わらせる取り組みも行っています。身近なリサイクル活動を通して、美しい環境を守ることにも力を入れています。

 

8.アメリカでこれから何かを始めようと思っている日本人の方にメッセージをお願いします。

人に意見を聞くと、多くの場合、お金を稼げる仕事かどうかという視点が強くなりがちです。それが本当に自分のやりたいことと一致していれば問題ありませんが、そうでない場合、知らず知らずのうちに自分の道がそれてしまうこともあります。だからこそ、自分が心から好きだと思えるものは何かを見つけることが大切だと思います。人生は、自分の「好き」を軸にしないと、どこか満たされないものになってしまう気がしています。

私の場合、8歳のときに両親とハワイを訪れ、「なんて青が濃くて強い世界なんだ。ここに住みたい」と強く思ったことを、今でも鮮明に覚えています。子どもの頃から色に惹かれることが多く、高校時代にはファッションに興味を持ち、その流れでファッションのメッカであるNYへと向かいました。でも、それでもハワイに住みたいという想いは、ずっと変わりませんでした。そして、コロナ禍で立ち止まった中、今がその時と感じて移住を決意しました。最初からやりたいことを実現するのは難しいので、まずは目指す方向に近づくために、できる事から始めました。そして諦めずに、最終的に叶えたい目標を持ち続けていたことで、夢を形にできると実感しています.

舟橋潤さんのホームページ:https://claylabo.com/

 

★ Interviewer's note

自分が心から「これが本当に好きだ」「楽しい」と思えることを見つけ、周囲の意見に流されることなく、その気持ちを大切にすることが何よりも重要だと感じました。舟橋さんは、メイクアップアーティストとして生計を立てながら、自分の好きなことをメイクの仕事に取り入れ、十分な準備期間を経てきたからこそ、タイミングが整った時に自分の本当に好きなことを仕事にできたのだと思います。

舟橋さんの「アメリカにはチャンスがどこにでも転がっている」という言葉が印象に残っています。ただ、本当のチャンスは、努力する姿を見てくれる人がいてこそ生まれるものだと思います。だからこそ、目の前のことに一生懸命取り組むことが、結果として成果や報酬につながっていくのではないでしょうか。

また、学生への指導について、「できることは全力でやりたい」と語っておられました。学生の変化や成長を間近で見守る中で、やってよかったと心から思える瞬間があり、それが喜びとなり、次への力にもなっているのだと感じました。自分らしいやり方で誰かのために尽くすことによって、人とのつながりの中で幸せや充実感が広がっていく、その姿に強く共感しました。

これから舟橋さんがどんな色のセラミックを生み出し、どのような新たな挑戦に向かわれるのか、今後の活躍がとても楽しみです。

取材・執筆:ビュフター一枝

 

 

思春期の親子のコミュニケーションセミナー開催報告

思春期の親子のコミュニケーションセミナー開催報告

5月21日(日)に、Hub Park主催の「思春期の親子のコミュニケーションセミナー」がオンラインで行われました。Hub Parkのボードメンバーであり、成人発達心理学者・ハーバードメディカルスクールコーチング研究所フェローの渡邊理佐子氏が、世界の官民のリーダー向けの幹部研修・コーチングを提供する経験から、リーダーシップ理論や成人学習理論に基づいた中高生の自律を育むためのフィードバック法について教えてくださいました。...

Preparation for Job Hunting講座が無事に終了しました。

Preparation for Job Hunting講座が無事に終了しました。

4月からスタートした就職活動準備講座「Preparation for Job Hunting」講座が無事に終了しました! 全米各地より参加された9名の方々は、6週間を通して、キャリアの棚卸しや自分の理想の働き方について考え、履歴書やカバーレター講座をはじめとする3つの講座で学び、キャリアコーチとの1個別セッションに参加しました。講座録画を何度も見直して、ご自分の履歴書やカバーレター、LinkedInのプロフィールを作り直したり、インタビューの受け答えの想定問答を作成したり、皆さん、本当に熱心に取り組まれていらっしゃいました。...

5月21日(日)思春期の親子のコミュニケーションセミナー

5月21日(日)思春期の親子のコミュニケーションセミナー

5月21日(日)に開催されるHub Park主催ウェビナーのお知らせです! 今回のタイトルは「思春期の親子のコミュニケーションセミナー」。Hub Parkのボードメンバーであり、成人発達心理学者・ハーバードメディカルスクールコーチング研究所フェローの渡邊理佐子氏を講師に迎え、世界の官民のリーダー向けの幹部研修・コーチングを提供する経験から、リーダーシップ理論や成人学習理論に基づいた中高生の自律を育むためのフィードバック法について教えていただきます。参加のお申込・詳細は上記フライヤーのQRコードか、こちらからお願いいたします。...

#13: 美味しい食事を通して、たくさんの人と繋がっていきたいー谷脇多佳子さん(DC)

#13: 美味しい食事を通して、たくさんの人と繋がっていきたいー谷脇多佳子さん(DC)

今回はHarmonious Kitchen創設者、代表の谷脇多佳子さん(ワシントンDC在住)をご紹介いたします。 1. 現在のお仕事につく経緯を教えてください。 今の仕事をする前は、アメリカで環境問題や食の安全に特化した通訳・翻訳業などをしていました。私は常に、本当にやりたいことは何か自分に問いかけていたのですが、ある時、いわゆる日本の食べ物として有名なお寿司やラーメンではなく、それ以外の食事を提供したいと考え始め、今までの知識と経験をもとに、安全で美味しい食事を提供するお惣菜屋さんを始めようと決断しました。 2....

就職活動準備講座「Preparation for Job Hunting」申し込み開始!

就職活動準備講座「Preparation for Job Hunting」申し込み開始!

「アメリカで働いてみたい。」そう思っていても、日本とは違う就職活動に躊躇して、なかなか一歩を踏み出せない方もいらっしゃると思います。 このたびHub Parkでは、在米日本人女性の働き方・生き方支援を目的としたBridge to Careerプログラムの一環として、就職活動に必須の履歴書やカバーレターの書き方、インタビューのコツなどを、短期集中で効果的に学べる就職活動準備講座「Preparation for Job Hunting」を開講いたします。 今年こそはアメリカで働きたい!転職をしたい!という方。...

#11: 薬学の知識や子育ての経験を活かして在米日本人の生き生きとした笑顔を広げたい- 立川ひさ子さん(CA)

#11: 薬学の知識や子育ての経験を活かして在米日本人の生き生きとした笑顔を広げたい- 立川ひさ子さん(CA)

今回は、カリフォルニア州サンディエゴで、医療通訳をしながら非営利団体を運営する、立川ひさ子さんにお話を伺いました。 1. アメリカに来た経緯を教えてください。 研究者の夫がアメリカで研究をしたいと言い出し、ボストンの大学で博士研究員の仕事を見つけてきたことがきっかけで、家族でアメリカに引越してきました。その後、サンディエゴの企業に夫の就職が決まり、再度引越しました。 2. 現在のお仕事や活動、そこに至る経緯を教えていただけますか? 医療通訳をしながら、子育て中の親御さんや中高生を応援する非営利団体「ぽーと会」の運営をしています。...

#10: 点と点を線として繋ぐキャリア形成を意識するーブラウン恵子さん(VA)

#10: 点と点を線として繋ぐキャリア形成を意識するーブラウン恵子さん(VA)

今回はMGMのマーケティング・VIPサービス部門のお仕事とフラワーデザイナーとして事業を運営するブラウン恵子さんをご紹介いたします。 1. アメリカに来た経緯や現在のお仕事について教えてください。 日本の大学からアメリカの大学へ編入して、インテリアデザインを専攻しました。その後、建築の仕事に就いたのですが、両親の看病の為、急遽、休職し帰国する事になりました。...

#9: 自分をエンパワメントしてくれる「何か」は、自分で見つけにいく。ー竹中はる花さん(MD)

#9: 自分をエンパワメントしてくれる「何か」は、自分で見つけにいく。ー竹中はる花さん(MD)

9回目の今回は、フリーランス広報の竹中はる花さんをご紹介いたします。 1.アメリカに来た経緯を教えてください。 2017年より、夫の職場派遣の大学院留学に伴い約2年ボストンに住んでいました。帰国し東京に戻ってから2年余りで夫の海外勤務の話が持ち上がり、悩んだ末帯同することを決め、2021年にワシントンDCエリアに引越してきました。 2. 今はどのようなお仕事をされていますか?...

Interested in joining Hub Park?

Other Interviews

#17: テニスを通して輪を広げていきたいー 新谷みきさん(CA)

#17: テニスを通して輪を広げていきたいー 新谷みきさん(CA)

今回は、カリフォルニア州サンディエゴで、アメリカへのテニス留学サポート会社を経営されている、新谷みきさんをご紹介します。 1. アメリカに来た経緯を教えてください。 1997年に、主人の海外赴任に帯同し、子供を二人連れて、サンディエゴに引っ越してきました。引っ越しをした日が、下の子供が1歳になる前日で、アメリカに到着して、すぐに1歳をお祝いしたことをおぼえています。それから、ずっとサンディエゴで暮らしています。 2. 現在のお仕事、あるいは今、情熱をもって取り組んでいること、好きでやっていることは何ですか?...

#15: 子どもと親、両方の気持ちに寄り添う幼児教育の場をつくりたい カー理恵さん(VA)

#15: 子どもと親、両方の気持ちに寄り添う幼児教育の場をつくりたい カー理恵さん(VA)

今回ご紹介するのは、幼児教育に携わっていらっしゃる、カー理恵さんです。 1.アメリカに来た経緯を教えてください。 福岡県内にある幼稚園で教諭として勤めていた頃に、長崎佐世保にある海軍基地で勤務していたアメリカ人の夫と出逢ったことがきっかけです。結婚後は夫の任務地のハワイ州へ。その後、神奈川県横須賀市、カリフォルニア州など約3年ごとに引っ越しをしながら、2014年にここバージニア州にやってきました。 2.現在どんなお仕事をされていますか?...

#13: 美味しい食事を通して、たくさんの人と繋がっていきたいー谷脇多佳子さん(DC)

#13: 美味しい食事を通して、たくさんの人と繋がっていきたいー谷脇多佳子さん(DC)

今回はHarmonious Kitchen創設者、代表の谷脇多佳子さん(ワシントンDC在住)をご紹介いたします。 1. 現在のお仕事につく経緯を教えてください。 今の仕事をする前は、アメリカで環境問題や食の安全に特化した通訳・翻訳業などをしていました。私は常に、本当にやりたいことは何か自分に問いかけていたのですが、ある時、いわゆる日本の食べ物として有名なお寿司やラーメンではなく、それ以外の食事を提供したいと考え始め、今までの知識と経験をもとに、安全で美味しい食事を提供するお惣菜屋さんを始めようと決断しました。 2....