今回は、マサチューセッツ州でコミュニティ運営や茶道の先生をしている、塩谷雅子さんにお話を伺いました。
1. Please tell us how you came to the U.S.
Social Enterprise Conferenceという、社会起業家大会に参加するスタディーツアーに参加した際に夫と出会い、名刺交換から交際に繋がり、2014年の結婚を機にボストンに来ました。
2.現在のお仕事、あるいは今、情熱をもって取り組んでいることは何ですか?
色々な活動をしてるのですが、今は基本的に6歳の息子の「アンスクーリング」のために、家で息子と過ごしています。30校以上学校を見学しましたが、学校に行きたくない、お家が良いとのことで、アンスクーリングを選びました。アンスクールは、こちらから教えることはほぼぜず、子どもの学びたい気持ちを汲み取ってそこから学びが始まります。興味関心に基づいて自分で課題を見つけ、それを解決することで学びを深めていきます。元々夫も私も教育関係の仕事をしていたので、妊娠する前からアンスクールの可能性を見越して夫婦で色々と準備をし、満を持して取り組んでいます。今は息子の興味がYouTubeとゲームにあるので、ゲームをプレイして動画を撮影し、編集してアップロードする毎日です。息子の成長を側で見ることができてとても楽しいですし、息子を見ていると私も頑張らなくちゃと思います。
3.他の活動についても教えていただけますか?
アメリカに来てからは、Lyriko(lyriko.com)という、音楽で言語を学ぶアプリの制作をしています。夫の始めた小さな会社なので、基本的には何でもしています。プログラマーたちの作ってくれたゲームをプレイして、バグを見つけてそのタスクを管理したり、移民の子どもたちや女性ホームレスシェルターなど届けたい団体とコラボレーションしたり、翻訳、ストーリー作成、アート・UIマネジメントなど幅広く取り組みました。息子の生活リズムの変化とコロナが重なり、ベビーシッターさんにお願いできなくなったので、今は息子中心の生活ですが、当時はアプリを使ってくれている人に会いに行くのが嬉しかったです。
自宅でシェアハウスをしているので、息子との活動の傍ら、家の管理と改修をしています。さらに、今年から自宅で茶道教室を始めました。茶道は小学生の頃に始め、アメリカに来てから英語でも勉強したので、お子さま自身や、お子さまと一緒に参加していただける教室になったら良いなと思っています。
もう一つは、週一回の朝食会「セントラルで朝食を」の開催です。ボストンにいる日本人の方とカフェに集まり、それぞれが気になるニュースなどについて話をしています。きっかけは息子が一歳半くらいの時で、朝早くから騒いでいるとシェアメイトに迷惑になるので外に出ることにしました。同時に私は日本語が話せないとストレスを感じるので日本語で話したかった、また育児から自分を少し切り離して社会のことを考えるのにも頭を使いたかったので、家の近くで朝食会を始めました。最近ボストンに来た方や長く住んでいらっしゃる方、研究者の方や自営業の方、様々な背景を持つ方にお越しいただいています。今この時点でボストンにいる人々がつながっていく瞬間を見るのが楽しいです。コミュニティづくりが好きなんです。
コミュニティ作りといえば、息子の日本語維持のために「おひさまプレイグループ」という日本語のプレイデートも不定期で開催しています。3歳頃までは毎週公園で集まっていましたが、最近は息子が家でしたいことがあるので、週に1、2回自宅に遊びに来ていただいています。参加年齢は0歳から7歳くらいまで様々で、週に一度おもちゃや絵本を入れ替えたり、簡単な実験やお菓子作りをしたりしています。今後も細々と続けていきたいので、お気軽に参加していただけたらと思います。
4.アメリカ生活で、苦労したこと、日本に帰りたくなった体験などを教えてください.
アプリ制作に参加した1年目がとにかく大変でした。日本の会社で働いた経験しかなかったので、夫の会社での働き方はそれまでとは全く違うものと感じました。一緒に働く仲間は他の国に住んでいますし、全てオンラインでのコミュニケーションで、仕事に対する考え方や熱意もそれぞれでした。そのため仕事の範疇の理解が異なり言い合いになったこともあります。そこから、きちんと伝えることの大切さや、様々なコミュニケーション方法があるということを学びました。夫の家族ともコミュニケーションにズレが生じてしまって、セラピストさんにお世話になりながら、異文化を理解した上で無理のないコミュニケーションを心がけるようにもなりました。
最近は、建築関係の業者とのやり取りがかなり難しく、スケジュール通りに来なかったり、見積もりが上がってこなかったり、とにかく私の方が管理をしなければならないので、日々とても鍛えられています。
5.アメリカにきて、自分が成長したと思える・ 体験談はありますか?
一番成長したと思うのは、渡米1、2年目で参加したピッチ大会です。ピッチ大会は、自分たちの会社を支援してもらうためにプレゼンテーションをする場で、合格すると会社運営の資金がもらえたりするので、当時はカンファレンスやアクセラレーターなどたくさんの大会に応募していました。ピッチはとても短いのですが、限られた時間で慣れない英語でアピールするのがとても大変でした。発表前にあまりに怖くてトイレで泣いたこともありますが、一度乗り越えると不思議と平気になって、通じないのは相手の理解度のせい、と思えるほど心が強くなりました。辛かったですが、今ではやって良かったと思っています。
6. 今後の夢や目標は?今後、活動をどう進めていきたいですか?
息子のアンスクールを始めて、学校に行きたくないと困っているご家族がたくさんいることがわかってきました。低年齢でアンスクーリングをしたいご家族に対して差し伸べられる手が少なかったり、子どもたちが学べることに偏りがあったりという現状があります。今後は、未就学や低学年でアンスクーリングを選択したご家族のサポートをしたり、特に低学齢で学ぶ場所のない子どもたちの居場所作りなどに力を入れていきたいです。日本やアメリカなど国に関わらず、アンスクールについての情報を広げ、親御さんの助けになれたらと考えています。
今年から始めた茶道教室は、自宅を茶道のできる環境にし、親子で遊んだりお稽古したりできるカジュアルな空間にしました。私の茶道の先生が、妊娠中も出産後すぐもとても温かく受け入れてくださったので、私もそんなお稽古場を目指しています。これからも子ども連れの方や、お子さんも興味があれば一緒に茶道を楽しめる教室にしていきたいです。
7.アメリカに来て、仕事探しや何か活動を始めようと思っている方へメッセージをお願いします。
仕事を選択する時に大切にしてほしいのは、仕事内容と働き方両方です。働き方については、エナジーベースという自分のエネルギー(元気)に着目して仕事を調整する方法をおすすめします。仕事と子育てを両立する上で、子どもの成長とともに目まぐるしく日々が変わっていくので、それに合わせて仕事のやり方や割合を変えたり、協力してくださる方を探すことも妥協なくやるようにしています。親も子どもも幸せに過ごせるようなチームを作ることが大切だなと心から思っています。
また、慣れない環境の中で日本語が話せないとストレスが溜まってしまうので、適度に日本語でリラックスしながら、英語環境に慣れていくのが良いのかなと思います。そして、移住したからには、自分の今いる環境を楽しめるように色々と挑戦してみることをおすすめします。挑戦してみてだめなら、やめて次に進むことも大事です。とにかく体と心を大切に取り組まれることを応援しております!
塩谷雅子さんの息子さんのYoutubeチャンネル Py0t0Games(https://www.youtube.com/@pyotogames)
セントラルで朝食を https://www.facebook.com/groups/952117598275651/
おひさまプレイグループ https://www.facebook.com/groups/121685461888985/
★ Interviewer's note
塩谷さんは、お忙しい毎日を過ごされていると思うのですが、丁寧に、そして穏やかにインタビューにお答えいただきました。素敵な笑顔がとても印象に残っています。海外に移住してきた時には誰しも無理をしてしまうことが多いように思います。今回のお話の中で、自分のエネルギーのレベルに合わせて活動することの大切さを繰り返しお話されていて、そのことの大切さを改めて感じました。これからも活躍を楽しみにしております。
Interviewer: MASAE MÁK