9回目の今回は、フリーランス広報の竹中はる花さんをご紹介いたします。
1.アメリカに来た経緯を教えてください。
2017年より、夫の職場派遣の大学院留学に伴い約2年ボストンに住んでいました。帰国し東京に戻ってから2年余りで夫の海外勤務の話が持ち上がり、悩んだ末帯同することを決め、2021年にワシントンDCエリアに引越してきました。
2. 今はどのようなお仕事をされていますか?
渡米直後からフリーランスとして仕事を開始し、クライアントも現在は複数に増え、気づけば一緒に仕事をする人も業界もその内容も、多岐に亘るようになってきました。渡米以前は、ヘルスケアメーカーの経営企画部門で広報として働いていました。これまで営業職や商品企画なども経験したのですが、扱うステークホルダーが多く経営とも近い広報の仕事が面白くやりがいもあり、自分に合っていたようです。そんな中、夫が海外留学することになり、当時は特に後悔の気持ちも無く会社を退職してボストンについていきました。ボストンでは出産も経験し、異国での子育ての日々は新鮮でとても充実していたのですが、社会との繋がりを取り戻したい気持ちも強くなり、「働く」ということが自分にとって大切なものだったことに気づかされました。夫の留学が終了し、日本に帰国するタイミングで、子育てと仕事の両立がしやすい職場環境だった以前の職場に再入社することにし、途切れてしまった自身のキャリアを取り戻そうと再スタートを切りました。なので、たった2年余りで再び夫に海外の話が持ち上がった時はショックでしたね。子供にとってはきっといい経験になる、家族一緒に暮らしたい、でも今回は、自分のキャリアも絶対に途切れさせたくない。そんな気持ちで、海外帯同の道を実現させようと、職場には夫の内示が出た段階で、雇用を維持できないか相談をもちかけました。渡米半年前という早いタイミングで動き始めた理由は、社内で前例が無いことに対し様々な人を巻き込みながらハードルをクリアしていくには、けっこうな時間がかかると思ったからです。結果的には、正社員としての雇用維持はどうしても難しかったのですが、個人業務委託(フリーランス)というかたちで職場と契約をし、広報業務をアメリカからフルリモートで担当できることになりました。
3. 仕事をしていて楽しい点、大変な点は何ですか?
楽しい点は「学びの連続」であることです。今携わっている仕事のひとつである組織のダイバーシティマネジメントは、ビジネス感覚だけでなくアカデミックな知識が必要な分、学びがとても深くて面白いです。日本の外にいるからこそ得られる視点やアメリカ現地で感じる多様性も仕事に役立っていますし、子どもとの関わり方や教育の方向性、人との繋がりなど自身のプライベートにも活きる知識だなと感じています。そんな学びを、働くことを通じて得ることができるのも、やりがいのひとつです。大変でもあり難しいなと思うのは、育児・家事・仕事の3つのバランスの取り方です。今は毎日が綱渡りというか本当に自転車操業な状態で。特に、時差には苦労しますね(笑)。日本側と会議が組みやすい夕方~夜の時間帯に打ち合わせをしたいのは夫も同じなので、被ってしまうと大変です。まだ子供が小さいので、手を変え品を変え、あれこれ工夫しながらなんとか会議の60分を凌ぐ…という日も少なくありません(笑)。
4. アメリカ生活で、苦労したこと、日本に帰りたくなった体験などがあれば教えてください。
二度目のアメリカ生活なので、前よりはうまくやれるだろうと思っていたのですが、実は私の場合そんなことは無かったです。海外生活は刺激的で魅力にあふれていますが、時としてストレスになることもあります。異国に住むというのは、慣れ親しんだ自分の感覚とは違うところに身をおくということ。もちろん、その違いこそが楽しいわけですが、疲れてしまう時があるのも事実です。むしろ日本にいるときよりも積極的に、息抜きやリフレッシュの時間を持ったほうがいいなと感じてます。
5. アメリカに来て、自分が成長したなと思えた出来事はありますか?
子供を現地のスクールに通わせたり、フリーランスとなって仕事を開拓していったり、様々な人と出会ったり、仕事と家事育児をこなす。二度目のアメリカ生活ですが、あらゆることが初めての経験となっています。これまでとは全く違う視野が広がった気がしますし、なんとかこなしながら少しずつでも前進している自分は、きっと成長できているのではないかと、そう信じたいです。
6. 今後の目標について教えてください。
夫の任期が終わる約2年後に日本に帰国しますが、フリーランスを続けるか再び組織に属すか、未だイメージは掴めていません。ビジネスの体系的な知識や実践スキルをもっとつけたいので、経営管理学を学ぶべく大学院を目指してみたいなと、ふわっとですが頭に浮かんでいます。
7.やりたいことが見つからない、あるいはやりたいことが分かっていても、なかなか一歩を踏み出せずに、もやもやしている在米日本人女性にメッセージはありますか?
そのもやもやが消え去っていく自分の力が発揮できるフィールドを、是非探しに出て欲しいと思います。エンパワメントしてくれる「何か」は、絶対に見つかるものだと思います。でも他の誰でもなく、自分自身が見つけにいくしかない。今は、その見つけたい「何か」を探し出すためのツールが沢山ちらばっていてアクセシビリティの高い世の中になっていると思います。さらに言えば、見つけるまでの過程自体も、とても楽しいものです。
★Interviewerのあとがき
パートナーの海外勤務が決定した際、その配偶者が考えなければいけないことはたくさんあります。帯同するのか、自分が現在住んでいる国に残るのか。帯同を決めた場合、どのエリアに住んで、どういう暮らしになるのか。子供がいる場合に、学校はどうするのか。そして、仕事をしている場合、その仕事はどうするのか。海外でもその仕事を継続することは可能なのか。可能でない場合、自分の選択肢にはどういうものがあるのか。はる花さんは、帯同配偶者として今二度目のアメリカ暮らしをされています。一度目の駐在の際に、「働く」ことがどれほど自分にとって大切か、ということを痛感され、二度目の駐在の際には、自分のキャリアを途切れさせないために、社内のたくさんの人を巻き込み、その結果現在はフリーランスとして、キャリアを継続させていらっしゃいます。現状に落ち着くまでの道のりは決して平たんなものではなかったと思います。それでもあきらめることなく、しっかりと自分の「こうありたい」と思う姿を形にしたはる花さんは、本当に素晴らしいと思いました。そして、「自分をエンパワメントしてくれる”何か”は絶対に見つかる」というメッセージは、今その”何か”を探している最中の人たちを、確実に勇気づけてくれることでしょう。