私の生き方 in アメリカ

#5: 大切なのは最初の一歩を踏み出すこと ー 菊農桂子さん(VA)

12/12/2022 | 私の生き方 in アメリカ インタビュー

今回は、VAで編み物デザイナーとして活躍中の菊農桂子さんのインタビューです。

1. アメリカに来た経緯を教えてください。

日本では教師として、中学校では理科、高校では化学を教えていました。その時に、卒業した大学の研究室の先生から、アメリカのテネシー大学の研究室でアシスタントを募集しているから行ってみないかと誘われたことが、アメリカに来たきっかけです。その時まで一人暮らしもしたことがなかったし、英語も自信があるわけではなかったのですが、海外で生活をしてみたいという漠然とした夢があったので、二つ返事でアメリカにやってきました。その研究室の仕事は3年が上限と決められていたのですが、その間に夫と出会い、仕事の契約期間が終了しても、そのままアメリカに残りました。

大学の仕事をやめた後、1年くらい何もしていない期間を経て、日系の製造業関連の会社で資材調達とロジスティックスの仕事をしていました。夫の転職がきっかけでバージニア州に引越した後は、ワシントンDC内にある特許事務所で事務をしていました。

2. 編み物デザイナーになったきっかけは何ですか?

もともと日本にいた時から編み物をしていましたが、テネシーにいる時に暇な時間が多かったことから、本格的にやるようになりました。ある時、日本の編み物雑誌で編み物のデザインを公募していたので、見よう見まねでパターンを書き、作品をつけて応募したら、運よく採用されました。これがきっかけで編み物デザイナーとしての活動を開始しました。そのあと他の国で発行されている編み物系雑誌にもデザインを応募するようになり、イギリスやフィンランド、ドイツの編み物雑誌にも、私のデザインと作品が取り上げられるようになりました。

テネシーにいた時も、バージニアに引越してきた当初も、編み物とは全く関係のない仕事をしながら、平行して編み物デザイナーとして活動していました。現在も、私が初めて応募したデザインを採用してくれた日本の編み物関連の会社で、事務の仕事もしています。専門で編み物デザインの仕事をしているというよりは、趣味の延長のような形で編み物をデザインをしている形です。

3. 編み物デザイナーのどんな点に喜びを感じますか?また、大変なことはありますか?

編み物好きな方たちが、私のデザインした作品を実際に作って着てくださり、その写真をインスタグラム等で拝見することが、とても幸せです。大変なことは、納期に追われている時ぐらいですね(笑)。あと、これは大変なことではないですが、以前少し残念な経験をしたことがありました。通常は、出版社等に送ったサンプルは、プロモーション期間が終わると、出版社がデザイナーのもとに送り返してくれるのですが、一度日本から送ってくれたサンプルが私まで届かなかったことがありました。どこでサンプルがなくなってしまったかもわからなかったので、全てがうやむやになってしまい、せっかく作成したサンプルがどこかに行ってしまったことは悲しかったです。

菊農桂子さんの作品

4. 今後の夢や目標はありますか?

今のところは、編み物デザイナーとしての仕事を細く長く続けていけたらなぁと思っています。現在は、出版社や毛糸メーカー会社と契約して、コントラクターとして働くことが多いのですが、編み物デザイナーの中には、自分で編み方のパターンを売っているデザイナーもたくさんいらっしゃいます。私も既にパターンをいくつか売っていますが、今後はもっとパターンの数を増やしていき、自主出版もしてみたいです。

5. アメリカで やりたいことが見つからず、もやもやしている日本人女性へのメッセージはありますか?

私も、いまだに、もやっとする時があります(笑)。今は編み物デザイナーとしての活動が楽しいし、満足もしているのですが、他にもやれることがあるのかな?と思ってみたり。

もやもやしている時は、まずは一歩を踏み出すことが大切だと思います。最初の一歩を踏み出すことはなかなか大変ですが、まずはやってみて、うまくいかなかったら他のことをすればいいのではないでしょうか?好きなことを突き詰めてやって、まわりにアピールしてみる。私も編み物雑誌に自分のデザインを応募してから、世界が広がっていきました。まわりにとらわれずに、自分の好きなことを頑張ってみたら、もしかしたら、何かが変わるかもしれません。

菊農桂子さんのインスタグラム:keikokikuno

★Interviewerのあとがき

編み物デザイナーとして、日本だけではなく海外の媒体にも作品を発表されている菊農さん。国を超えた活躍をされながらも、「編み物デザインは、あくまでも趣味の延長」と、ご自分のペースで、ゆったりと好きなことを楽しんでいらっしゃる姿がとても印象的でした。そんな菊農さんでも、「自分の生き方に、もやっとなることもある」ということ。読者の中にも、同じような思いをもっていらっしゃる方がいると思います。でもそれは、裏を返せば、自分の可能性を信じていて、「自分には、もっとできることがあるかも」と思っているからこそ、湧き出てくる感情なのではないでしょうか。自分を信じてあげられるなんて、とても素敵なことですよね。「もやもや」が出現したら、自分が本当にやりたいこと、挑戦してみたいことを考えるいいチャンス!と歓迎してあげてもいいのかもしません。そして、菊農さんのように、先のことはわからないけれど、まずは最初の一歩を踏み出してみる。その一歩を踏み出すことで、自分には想像もつかなかった新しい世界が広がるかもしれません。

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