今回は、言語学校でトレーニングアシスタントをされている、M.N.さんにお話を伺いました。
1. アメリカに来たきっかけを教えてください。
TESOL*を学ぶため、オレゴン州のポートランド大学に2003年から2007年の4年間留学したのがきっかけです。TESOLというのは、英語を第二言語として学ぶ人に向けて英語を教える方法を学ぶコースのことです。元々日本の中学校で三年間、英語教師をしていました。日本での教師時代は、英語教育が試験にフォーカスされる傾向を肌で感じ、実践的な会話力や異文化理解能力も同様に重要ではないかと考えるようになりました。なので、自分が外国に住んで経験を積むことによって、そういった部分も含めたより良い教育が出来るのではないかと思い、留学を決意しました。
*TESOL…Teaching English to Speakers of Other Languages
2. 現在のお仕事に関してお伺いしてもよろしいですか。
現在は言語学校のLanguage Training Assistantとしてフルタイムで働いています。この言語学校はアメリカ人の外交官や軍人の方などを対象に、言語だけではなく文化についても教えます。
言語学校は、日本語だけでなく、韓国語やベトナム語、タイ語等も教えています。私の具体的な仕事は、言語を教える先生やクラスのアレンジをすることです。生徒さんは国の代表としてアメリカ国外に住まれる方なので、言語そのものだけではなく、その国特有のビジネスマナーや生活スタイルについても勉強又は体験してもらえるようなクラスや課外活動を考えます。その他は、シラバスや教科書の手配、イベントを手伝ったりもします。
現在のLanguage Training Assistantとして働く前は、同じ言語学校で日本語教師をしていました。その当時は、日本の良いところも悪いところも、日本人としての本音を伝えることを大事にしていました。生徒さんと話していると、知らなかった日本の良いところに気が付いたり、改善点を考えさせられたりしました。自分でもニュースを読んだり、日本に住んでいた生徒さんがおすすめしてくれた本を読んだり、生徒さんと交流したりと、仕事に役立つ情報を収集していました。知らないことを教えることは出来ないので、常に勉強しないといけません。
3. 何故、言語学校のアシスタントと日本語教師の仕事を選ばれたのですか。
中学校の時から“先生っていいな。”と思っていて、将来は先生になりたいとずっと思っていました。特に高校生の時に、ある英語の先生に出会い、仕事をバリバリしている姿や、英語を勉強することで新たな世界が見えることに楽しさを覚え、英語教師を志すようになりました。また、バージニア州に来る前は、カリフォルニア州にある塾で、日本語/英語の先生をしていました。この塾は主にアメリカに駐在している日本人の子供達が対象で、子供達がアメリカから日本に帰っても大学に入学できるように勉強を教えていました。結婚をきっかけにバージニア州に引っ越してきましたが、その際に“日本人として何ができるか”と考え、教育のバックグラウンドを活かして日本を発信できる仕事として、日本語教育に関連する仕事をしたいと思いました。
4. 日本語教育に関わる仕事で楽しいことや大変なことは何ですか。
色々な生徒さんと先生に出会えることです。先ほども言いましたように、私の勤めている言語学校には日本語以外を教えている先生達がいます。先生達の教え方は様々でとても参考になります。生徒さんのために何が出来るかを一緒になって考え、自分自身も学べる良い環境にあります。特に今はアシスタントとして働いているので、元々やっていた教師とプログラムをアレンジする側の両サイドから物事を見ることができ、貴重な経験をしていると思います。逆に大変なことは、生徒さんがいるのに先生が中々決まらない中で先生を探したり、生徒さんから先生に苦情があった際にどう伝えるべきかというのは、頭を悩ませることが多いです。
5. アメリカ生活で苦労したことはありますか。
特にないです。思い返せば、オレゴン州に留学していた時に、アジア人ということで人種差別を受けたりはしました。また、バージニア州に引っ越したばかりの時は日本人の友達がいなかったので、自分のコミュニティがないことにストレスを感じていたこともあります。
アメリカ生活が長いので、逆カルチャーショックもあります。日本人のはずなのに、日本に帰国した際に疑問に思うことがあったり、家族と友人との間に価値観の違いを感じ、“自分の居場所はいったいどこなんだろう?”と思うこともあります。
6. 今後の目標はありますか。
仕事とは直接関係はないのですが、空手を頑張りたいと思っています。去年日本に帰国した際に、友達の息子が空手をやっていて、自分の子供達にも教えたいと思いました。そして、アメリカに帰ってきて、子供たちを空手教室に通わせることに決めました。子供達の授業に参加した時に、“私もやっていいですか?”と先生に聞き、一緒にやってみたところハマってしまいました!
空手には5つの道場訓があります。“Seek Perfection of Character”、”Be faithful”、”Endeavor”、“Respect Others”、”Refrain From Violent Behavior”。空手も含め、武道は人生に通じるものがあると感じています。
また、空手の経験/自分の本当に好きなことを通して、生徒さん達にも新たに日本の文化について教えられることも増えると思います。
7. アメリカにいて、やりたいことが見つからなくてもやもやしている日本人女性へのメッセージはありますか?
好きなことがあったらやってみる、行ってみることです。モヤモヤしているというのは、頭の中で考えてたり、心に留まっていることがあるということだと思います。アメリカは自ら行動しないと道を切り開いていけません。素直にやってみたいと思ったことを思った時にやってみる、そういった実行力が重要だと思います。
★Interviewerのあとがき
“日本が大好き”、“教育に興味がある”というM.N.さんは、自分の好きなこと/興味のあることと経験を活かして、今の仕事をやりがいをもって取り組まれているんだなと感じました。先生をされていた時に、日本の良いところも悪いところも伝えることを大事にされているのが、とても素敵だなと思いました。国の良いところと悪いところは、全てではないと思いますが、個人的には表裏一体であると思います。たまに“ある国ではこうなのに、日本はこうだ。”と日本についてネガティブな意見を見ることがあります。でもそれはもしかしたら、日本の良いところである裏側の影響かもしれないし、そもそも国の歴史や文化が異なることも背景にあるのではと思います。なので、日本の両面性を学ぶことは、日本という国そのものを奥深く理解するきっかけに繋がると思うので重要だと思います。M.N.さんは他の国の方に日本について教える経験が豊富だと思うので、その経験の中で気づいたことや考えさせられたことについてもっと深く聞いてみたかったです。